大吉月報2023年06月コラム

大吉コラム第5回「キツネの日」

数日前のこと。

仕事場にお祀りしている祭壇を、久しぶりに掃除した。

このところバタバタしっぱなしで、しばらく掃除もできなかった。

もちろん毎日手を合わせてはいる。

だが、時間をかけてのんびりとほこりを拭いたりしたのは久しぶりだ。

ずいぶんすっきりした。

部屋の「氣」が華やいだ。

神さまにも「うむ、ご苦労」と喜んでいただけた。

そんな気がした。

さあ、昼飯だ。

久しぶりに出前を取ることにした。

釜飯でも頼もうかと注文のためにPCに向かったが、妻の希望で途中からピザに変え、ネットで注文をした。

あらかじめ指定されていた時間が来た。

配達員のかたが商品を届けに来た。

開口一番、その人は言った。

「おめでとうございます!」

デリバリー担当の男性は、満面の笑みで私を見た。

以下、その人とのやりとりだ。

大吉「は? なにがですか」

担当「あれ。メール、ご覧になっていませんか?」

大吉「あっ……え、ええ、気がつきませんでした、けど……?」

担当「当選です」

大吉「……は?」

担当「100名様に1人のラッキーチャンスに当選なさったんです」

大吉「えっ! そうなんですか!? すると、えっと……」

担当「今回ご注文いただいた料金、全額お返しいたします」

大吉「……えっ!? 全額!?」

担当「ええ。ほら」

驚く私に、その人はレシートの料金欄を指で示した。

「0円」

たしかにそうある。

キツネにつままれた気分だった。

それなりに長いこと生きてきたが、こういう経験も珍しい。

信じられないですと言う私に、その人は明るく笑い、

「はっきり言ってとても珍しいですよ、これ。そうそうあることじゃないと思います。本当におめでとうございます!」

あらためて祝ってくれた。

妻と二人、キツネにつままれた気分のまま、昼飯を食べようとした。

するとそこに、今度は週に一度配達を頼んでいる「コー○」の配達員が注文品を届けに来た。

「おめでとうございます!」

担当のお兄ちゃんは明るく言った。

なんだ。

なんだ、なんだ、なんだ。

今度はなにごとだと思って身がまえると、なんと会員の中から抽選に当たったとかで「日頃のご愛顧に感謝して商品の詰め合わせをお持ちしました!」とたいそうな箱を渡される。

気分は、二匹。

キツネが、二匹。

左右の頬を同時につままれている心地がした。

妻と二人、不思議な気分で昼飯を食べた。

少し栄養をつけなければと、サイドメニューも多めに頼んでいたので食卓の上はにぎやかだ。

近くには「コー○」からもらった当選品(商品詰め合わせ)の箱を置いていたが、そちらもけっこうあれこれと入っている。

これ、全部ただかよと思うと、ちょっと気味が悪かった。

毎月、大吉月報のための「無料鑑定」をやらせていただいているが、当選したお客さまに喜んでいただける気持ちも、ちょっぴり分かった気がしたかな。

いずれにしても、いやでも信心深さは増す笑。

じつを言うと、祭壇の手入れをした直後に、ご褒美のように思いがけない僥倖にあずかったのは、今回が初めてではないのである。

そのときも「えっ……!?」と驚く出来事が起きた。

もちろん、「いやいや、どちらもただの偶然でしょ笑」と言われたらそれまでの話。

そう思うならそれでいい。

本当にそうなのかもしれないし。

だが私は、ちょっぴり不気味な、そして敬虔な気持ちで、仕事場の神さまに手を合わせた。

笑わば笑え。

しかし神さまは、まちがいなくここにいる。