大吉コラム第5回「キツネの日」
数日前のこと。
仕事場にお祀りしている祭壇を、久しぶりに掃除した。
このところバタバタしっぱなしで、しばらく掃除もできなかった。
もちろん毎日手を合わせてはいる。
だが、時間をかけてのんびりとほこりを拭いたりしたのは久しぶりだ。
ずいぶんすっきりした。
部屋の「氣」が華やいだ。
神さまにも「うむ、ご苦労」と喜んでいただけた。
そんな気がした。
さあ、昼飯だ。
久しぶりに出前を取ることにした。
釜飯でも頼もうかと注文のためにPCに向かったが、妻の希望で途中からピザに変え、ネットで注文をした。
あらかじめ指定されていた時間が来た。
配達員のかたが商品を届けに来た。
開口一番、その人は言った。
「おめでとうございます!」
デリバリー担当の男性は、満面の笑みで私を見た。
以下、その人とのやりとりだ。
大吉「は? なにがですか」
担当「あれ。メール、ご覧になっていませんか?」
大吉「あっ……え、ええ、気がつきませんでした、けど……?」
担当「当選です」
大吉「……は?」
担当「100名様に1人のラッキーチャンスに当選なさったんです」
大吉「えっ! そうなんですか!? すると、えっと……」
担当「今回ご注文いただいた料金、全額お返しいたします」
大吉「……えっ!? 全額!?」
担当「ええ。ほら」
驚く私に、その人はレシートの料金欄を指で示した。
「0円」
たしかにそうある。
キツネにつままれた気分だった。
それなりに長いこと生きてきたが、こういう経験も珍しい。
信じられないですと言う私に、その人は明るく笑い、
「はっきり言ってとても珍しいですよ、これ。そうそうあることじゃないと思います。本当におめでとうございます!」
あらためて祝ってくれた。
妻と二人、キツネにつままれた気分のまま、昼飯を食べようとした。
するとそこに、今度は週に一度配達を頼んでいる「コー○」の配達員が注文品を届けに来た。
「おめでとうございます!」
担当のお兄ちゃんは明るく言った。
なんだ。
なんだ、なんだ、なんだ。
今度はなにごとだと思って身がまえると、なんと会員の中から抽選に当たったとかで「日頃のご愛顧に感謝して商品の詰め合わせをお持ちしました!」とたいそうな箱を渡される。
気分は、二匹。
キツネが、二匹。
左右の頬を同時につままれている心地がした。
妻と二人、不思議な気分で昼飯を食べた。
少し栄養をつけなければと、サイドメニューも多めに頼んでいたので食卓の上はにぎやかだ。
近くには「コー○」からもらった当選品(商品詰め合わせ)の箱を置いていたが、そちらもけっこうあれこれと入っている。
これ、全部ただかよと思うと、ちょっと気味が悪かった。
毎月、大吉月報のための「無料鑑定」をやらせていただいているが、当選したお客さまに喜んでいただける気持ちも、ちょっぴり分かった気がしたかな。
いずれにしても、いやでも信心深さは増す笑。
じつを言うと、祭壇の手入れをした直後に、ご褒美のように思いがけない僥倖にあずかったのは、今回が初めてではないのである。
そのときも「えっ……!?」と驚く出来事が起きた。
もちろん、「いやいや、どちらもただの偶然でしょ笑」と言われたらそれまでの話。
そう思うならそれでいい。
本当にそうなのかもしれないし。
だが私は、ちょっぴり不気味な、そして敬虔な気持ちで、仕事場の神さまに手を合わせた。
笑わば笑え。
しかし神さまは、まちがいなくここにいる。